変わることのない神の性質
The Unchangeable Nature of God
April 24, 2017
ピーター・アムステルダム
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神の不変性、つまり変わることなく常に同じであるということは、神性の一部です。それは神の存在や完璧さ、決意、約束は変わらないということです。神の性質や性格は変わることがないのです。
宇宙も、その中にあるすべてのものも、変わり行きます。ある状態から別の状態への遷移、移行があります。たとえば、人間は年を取り、それにしたがって変わって行きます。身体が成長したり小さくなったりして、知的、情緒的にも成長したり衰えたりします。また、悪人が善人となったり、その逆だったりして、道徳的に変わることもあります。何かの技能を学んで練習し、それを身につけ、いずれその分野で上達することもできます。こういったことはすべて変化の例であり、被造物の命の一部なのです。 しかし、神は被造物を超越しており、変わることがありません。変わるとしたら、良い方向に向かうか悪い方向に向かうか、ということになってしまいます。知性や知識が増すか、減るか、また、より愛情深くなるのか、あまり愛情深くはなくなるのか、聖性が増すのか、減るのか、ということになります。しかし、神はそれらすべての点において「無限」の存在です。つまり、それらのことで向上することも悪化することもないのです。もうそうなったなら、神は神でなくなります。 被造物はすべて「なる」のです。現在の状態から別の状態へとなりつつあります。神は、それに反して、「ある」わけです。神は、ある。常に。変わらないのです。[1]
神の性格、属性、完璧さは変わることがありません。神は常に善であり、愛情深く、公正、義、聖、全知全能の存在です。それらのものが変化することはありません。神は不変です。
もし神の性格が変化するとしたら、私たちが今知っている優しく愛情深い神が、これからもそうであるのか、確信が持てなくなります。もし神が変わることがあるとしたら、そのうちに、罪もそう悪くはないと考えだしたり、ゆくゆくはご自身が邪悪なことをするほどに堕落したり、さらに邪悪な全能者と化してしまうかもしれません。しかし、神の性格や属性は変わることがないし、そうなることはありえません。それは不変であり、変化ということはないのです。
神はその決意も御心も計画も変えられはしません。いったん何かをすると決めたら、それをなさいます。救いの計画は、天地が造られる前から定められており、神はお約束通りに、その計画を成し遂げられるのです。旧約聖書の至るところに書かれた預言、予告、裁きは成就しています。イエスを通して人々を救うという決意、イエスの再臨や信者の永遠の命、裁き、天国についての決意は、変わることなく、確固たるものです。[2]
神は、御言葉や約束を変えることはなさいません。もし神が、ご自身の約束を守るのを止められるとしたら、もし御言葉に反したことを行われるとしたら、信頼できる存在ではなくなります。救いの約束、永遠の命の約束、祈りに答えてくださるという約束、それらすべてが疑わしいものとなってしまいます。もし神が変わることがあるとしたら、このような私たちの信仰の基盤となるものも変わることがあるということになります。しかし、神の約束と御言葉は永遠に定まっています。「主よ、あなたのみ言葉は天においてとこしえに堅く定まり‥‥」 [3]
神は考えを変えることがあるのか
神の不変性について説明する時、よく出てくる質問は、神が考えを変えられたように思える時についてのものです。たとえば、ニネベに行って、40日後に町は滅びるであろうと告げるよう、ヨナにおっしゃった時のことです。[4] もう一つの例は、病気にかかったヒゼキヤ王に対して、一度はすぐに死ぬとおっしゃったのに、後になって、寿命を15年伸ばされたときのことです。[5]
まるで神が考えをお変えになったかのように見える、こういった例について考える時、神は人類と関わりを持たれる、人格を持った存在であるということを覚えておかなければいけません。そうした関わりの中で、神は人の選択や決断に反応なさいます。誰かが悪事を働くと、神はそのような行動を不快に思われますが、もしその人が悔い改めて変わるなら、その人に対する神の関わりも変わります。その人に対する愛全般が変わることはありませんが、その人の選択に応じて、神からの反応が違ってくるのです。ニネベの場合、そこの人々は邪悪であったため、神の反応は、然るべくそこを滅ぼすべきだというものでした。そのことを伝えるようにと、神はヨナにおっしゃいました。ヨナがそうした時、人々は悔い改めたので、それに対する神の反応は、あわれみだったのです。
ヒゼキヤの場合、神は彼が死ぬであろうとおっしゃいましたが、ヒゼキヤは泣きながら祈ったので、神はその祈りに応えて、癒しを与えられました。
これらの実例では、神は関係する人たちの改心や祈りに対して、あわれみや愛のこもった反応をなさいました。どちらの場合も、神はその性格や性質、また全体的な決意や計画を変えられたわけではありません。神は変わってはおられず、人間が変わったのであり、それに対して神はその神性にもとづいて応じられたのです。
作家であり神学者であるウェイン・グルーデムは、それを次のように説明しています。
これらの事例はいずれも、まさにその瞬間に存在する状況に対する神の現時点での態度や意志を真に表すものとして理解されるべきです。状況が変われば当然、神の態度や意志の表現も変わります。これは、状況が異なれば、神はそれに応じて異なる反応をされるということです。ヨナがニネベに説教した例は、それを理解する助けとなるでしょう。神はニネベの邪悪さを見て、ヨナをそこへ送り、「四十日を経たらニネベは滅びる」と言わせられました。人々が悔い改めたら神は裁きを保留するという可能性は、聖書に記録されたヨナの布告の中では、明白に述べられてはいません。しかし、言うまでもなく、そのことは警告に暗示されています。警告を発する目的とは、悔い改めさせるためなのですから。人々が悔い改めたことで状況は変わり、神はその異なった状況に応じて、異なった反応をされたのです。[6]
上にあげた状況について覚えている必要があるのは、聖書は神を説明するのに擬人法を用いているということです。たとえば、ヨナの話の場合は、「和らぐ」[日本語訳聖書では、「思い返す」「思い直す」]といったことです。こういった言葉は、人間の理解力の範囲内で記述されたものとすることで一番よく理解できます。
この擬人的表現法について、ウィリアム・レーン・クレイグは、このように説明しています。
これらの聖書の物語の多くで使われている文章の様式、形式について理解することは極めて重要です。聖書は語りの形になっています。つまり、神に関する物語を、人間の視点から書いているのです。いい語り手は、その語りを魅力的なものとするために、生気を込め、思うがままに色を付けて物語を語ります。そのように、聖書にある神についての物語も、人間の視点から書かれたものであるため、神が将来のことを知らないばかりか、現在起きていることについても知らないかのように書かれています。神はアブラハムのもとに来て、こう言われました。「ソドムとゴモラの叫びは大きく‥‥わたしはいま下って、わたしに届いた叫びのとおりに、すべて彼らがおこなっているかどうかを見て、それを知ろう。」 [7] これでは、将来起こることどころか、現在起こっていることについても、神がご存知であることを否定してしまいます。他の箇所でも、神には鼻や目、腕などの体の部分があったり、翼があったり、という擬人的表現がされており、それをすべて逐語的に受け止めるならば、神は火の息を吐く怪物ということになってしまいます。そういった表現は、擬人化されたものなのです。こういった修辞的技巧は語り手の技術の一部であり、宗教哲学や組織神学教本のような読み取り方をすべきではありません。[8]
これらの状況それぞれにおいて、神はその性質、性格、決意、約束を変えられたわけではありません。むしろ、神はこれらすべてにおいて、公正で愛情深く、義であり、親しみがあり、ご自身の全体的な計画にそって行動するという面で、変わりはなかったのです。
神の不変性、つまり、変わることなく、常に同じであるということは、神に対する私たちの信仰の中核をなすものです。もし神が不変でなかったなら、もし神の性質や性格がたびたび変わってしまうなら、もし神が向上したり悪下したりするなら、神を信頼できなくなってしまいます。神の言葉や約束も信頼できません。
しかし、神の存在、性質、性格、決意、約束、計画は、変わることがありません。神は頼りにできる方です。忠実で真実であられるからです。神は岩であり、私たちはその上に家を建てられます。絶えず変わりゆくこの世界にあって、信頼できる方です。神は、不変の神だからです。
初版は2012年5月。2017年4月に改訂・再版。
朗読:ガブリエル・ガルシア・バルディビエソ。
1 マラキ 3:6; ヤコブ 1:17.
2 エペソ 1:11.
3 詩篇 119:89.
4 ヨナ 3:3–10を参照.
5 イザヤ 38:1–5.
6 Wayne Grudem, Systematic Theology, An Introduction to Biblical Doctrine (Grand Rapids: InterVarsity Press, 2000), 165.
7 創世記 18:20–33.
8 Video transcript excerpts from interview “Can God Change?” PBS “Closer to Truth” show.