前に目を向けて
Looking Forward
January 5, 2021
引用文集
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プロホッケー界最大のレジェンドの一人に、ウェイン・グレツキーがいます。カナダ出身であるグレツキーのキャリアは20年以上にも及び、試合に対する彼の姿勢から、その成功の理由が見えてきます。彼の鋭い戦略とは何でしょう。「パックがあったところではなく、パックの向かうところに向かって滑るんだ.」
この有名なアスリートは、ハイスピードで進行するホッケーの重要な戦略を知っていました。先を考えなければならないのです。パックがどこにあったかによってどう行動するかを決めることはできません。勝つためには、意図的に(そして正確に!)パックが次にどこに向かうかを予測する必要があります。ホッケーで勝つには、そして人生で勝つには、先を読むことが必要なのです。
クリスチャンとして、私たちは後ろのことを忘れ、前のことに向かって邁進しなければなりません。過去の栄光に歓喜するのであれ、失意に打ちひしがれるのであれ、過去のことで無駄に頭を使ってはいけません。私たちは過去を忘れることを選び(そう、それは選択なのです)、キリストと、キリストが私たちのために用意してくださった未来にしっかりと目を留めておかなければならないのです。
使徒パウロはピリピ3:13-14でこのように勧めています。「兄弟たちよ。わたしはすでに捕えたとは思っていない。ただこの一事を努めている。すなわち、後のものを忘れ、前のものに向かってからだを伸ばしつつ、 目標を目ざして走り、キリスト・イエスにおいて上に召して下さる神の賞与を得ようと努めているのである。」
パウロからのアドバイスとは、何でしょうか。忘れなさい、過去にこだわってはいけません、ということです。昨日のこと、さらには去年のことでさえ、考えてばかりいてはいけません。過去の達成に浸ることで時間を無駄にしてはいけません。そして、すでに神のゆるしを求めたのに、過去の過ちについて自分を責めてはいけません。前に進み、キリスト・イエスにあって約束されている、天に向かうようにとの神の呼びかけを追い求めなさい。福音は過去に対する見方を変え、私たちを変えてくれます。私たちは、神に協力し、他の人々をイエスに導きつつ、私たち個人の経歴を神の目的のために使っていただこうと決意できるのです。
神は、キリストにあって私たちが今までよりも良いものになれると約束しておられます。この「約束」をもっと重視し、「今まで」にはあまりこだわらないようにしましょう。人生はあなたの後ろではなく、目の前で起きているのです。霊のスケート靴を履いて、バックミラーに映るものは無視し、神が用意してくださった未来へと滑って行きなさい。—カレン・エーマン [1]
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アンブローズ・ホリングワース・レッドムーンはこう書きました。「勇気とは恐怖心がないことではない。むしろ恐怖心よりも他の何かが重要であると判断することである。」 では、どうすれば恐れていることを実行する勇気を得られるのでしょう。それには恐怖の先にあるものを見なければなりません。ゴールに、「他の何か」に、目を向けるのです。
「フィアー・ファクター」というテレビ番組がありました。この番組では、出場者が一連の勇気テスト、あるいはより正確に言えば恐怖心を克服するテストに挑むのです。勝ち抜いて次の段階へ進むには、恐ろしい状況や奇妙な状況、あるいはぞっとするような状況下で、一定の技を成し遂げなければなりません。なぜ、自分からそのような苦しみに身をさらそうというのでしょう。それは最後まで残った人に与えられる賞金、つまりこの場合は5万ドルという大金のためです。
彼らだけではありません。登山家は風雨にさらされ、飢えと疲労にさらされる過酷な状況下で、生命と手足を危険にさらしながら頂上に到達するスリルを味わい、今もそしてこれからも他のほとんど誰も見ることのない視点から世界を見ようとします。アスリートは、トロフィーや金メダル、賞金などを目標に、信じられないほどの自己鍛錬を行い、限界まで自分を追い込みます。
使徒パウロは第2コリント11章で、いかに長く辛い労苦を忍び、眠られぬ夜を過ごし、飢えと渇きに苦しみ、裸にされ、鞭打たれ、叩かれ、石を投げられて死に面し、難破し、投獄され、絶えず危険にさらされ、あちこち移動していたかを語っています。そのようなことに耐える勇気を、彼はどこで見出したのでしょうか。ピリピ人への手紙3:13-14で、彼はその秘訣を語っています。「後のものを忘れ、前のものに向かってからだを伸ばしつつ、 目標を目ざして走り、キリスト・イエスにおいて上に召して下さる神の賞与を得ようと努めているのである。」 それが秘訣です。目標に向かって進みなさい。賞与に目を留めていなさい。
この世界は問題、悲しみ、痛みに満ちており、今日のニュースの見出しも聖書の数々の預言も、状況が良くなる前に、まず悪くなると告げています。私たちは、これから起こることに立ち向かう勇気をどこに見出せばいいのでしょうか。それには、この人生の先を見据えて、あの賞与に目を留めなければなりません。
多くの人にとって、天国は非常に遠い存在に思えます。聖書に書かれているように、天国は私たちが住む物質世界よりもはるかに現実的で、限りなく永続的な世界であると理解するのは難しいことです。しかし、この天国のビジョンは信仰の核心となるものなのです。信者はそこに勇気を見出します。モーセは信仰によって、「見えないかたを見ているようにして、忍んだ」のであり、[2] 私たちもそうできるのです。—ミスティ・ケイ
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私はワイキキの海岸から800メートルほど離れた所で、サーフボードの上でうつ伏せになっていました。かねがね、ハワイでサーフィンをしてみたいと思っていたのですが、この巨大なエメラルドグリーンのうねりの中にいると、急に冒険的な気分が失せてしまいました。
「この辺でいいだろう。」 自分のサーフボードで同行した褐色の肌のインストラクターが言いました。「さあ、ビーチのほうを向いて。波がボードを持ち上げたら、強く漕ぐんだ。そして立ち上がって。」
立ち上がるだって? 私はパニックが声に出ないよう、気持ちを抑えながら聞きました。「教えてくれ、一番大切なことは?」
「一番大切なこと?」 彼は笑顔でそう繰り返してから答えました。「後ろを見ないこと!」
次の波でボードが持ち上がり、目の前の海に大きな裂け目ができているように見えました。ボードは傾き、ほとんど垂直に見えるエメラルドグリーンの断崖絶壁の奥深くへと落ち込んでいきました。私は立ち上がろうとしました。背後には100万トンもの海水が頭上に構えています。その瞬間、私はインストラクターが言ったことを忘れ、後ろを振り返ったのです。…
さて、溺れはしませんでした。まあ、完全には。私はそこに留まって太平洋に浮かび、ボードが離れていくのを見ながら、ついにもう一度挑戦する勇気を取り戻したのです。
それ以来、インストラクターの言葉を忘れたことはありませんでした。後ろを見ないこと。過去の失敗、失われた機会、傷ついた気持ちを。現実の、あるいは想像上の不満を。そうではなく、前を見なさい。前を向くのです。前にあるものに集中しなさい。それが一番大切なことです。
主よ、新年を迎えるにあたり、変えることのできない過去を振り返るのではなく、どうか挑戦に満ちた未来に手を伸ばすことができますように。—アーサー・ゴードン
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あなたはわたしの愛からさまよい出ることはない。決してわたしに嫌われることはない。わたしがあなたのことを気にかけていない時間など、ほんの一瞬たりともない。わたしの心には、わたしが愛し、そのために命を捧げたわが子であるあなたに対して、愛のない思いは少しもない。
未来を恐れてはいけない。そして、過去を悔やんではいけない。わたしの愛に満ちた顔を見上げなさい。わたしのもとに来なさい。そうすれば、今この時から、あなたが永遠にこの故郷へ戻ってくる日まで、全き強さ、全き愛、全き赦し、全き慰めを見出すことができる。—イエス
2021年1月アンカーに掲載 朗読:ジョン・ローレンス
音楽:マイケル・ドーリー