親切は無駄にならない
Kindness Is Never Wasted
May 14, 2024
引用文集
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互いに親切にし、優しい心で赦し合いなさい。神も、キリストにおいてあなたがたを赦してくださったのです。—エペソ4:32 新改訳2017
クリスチャンは長い間、親切を天国的な美徳のひとつとして讃えてきました。しかし、私たちは、親切をしばしば軽く捉える時代に生きているのです。たとえば、親切は代価のかからないものとみなしています。「思いつきの親切」を称えるし、親切とは、何の前後関係もなくなされるものだと考えています。もちろん、この不親切な世界では、それが代価のかからない、とっさの思いつきでなされたことに見えたとしても、見知らぬ人の親切に驚かされるのは喜ばしいことです。しかし、親切についてのキリスト教的なビジョンは、それよりもはるかに深く、より重要で、前後関係に即しているものなのです。
キリスト教的な親切とは、他のこととは関わりなく示される単なる礼儀や美徳ではなく、不当な扱いや傷つけられたことに対する驚くべき反応なのです。それは思いつきでも代価のかからないものでもなく、親切な反応というよりも、むしろ、意地悪や非道な行為に対する、代価のかかる、直感に反した反応なのです。…
他のいろいろな美点の中でも、親切はしばしば寛容(忍耐)や憐れみと関連しあって現れます。… 憐れみに関しては、エペソ4:32が、「互いに親切にしなさい」という命令を、「優しい心で」(あるいは「憐れみ深く」、ギリシャ語のエウスプランクノス)という言葉を用いて説明しているのが印象的です。親切とは、優しく憐れみ深い心の表れなのです。コロサイ3:12は、この3つをまとめて、謙遜と柔和と共に記しています。 「あなたがたは、神に選ばれた者、聖なる、愛されている者であるから、あわれみの心、慈愛[親切(新改訳2017)]、謙そん、柔和、寛容を身に着けなさい」。…
親切は御霊の結ぶ実であり(ガラテヤ5:22-23; 2コリント6:6)、人間の生まれながらの心から出るものではないとパウロは言います。本当の親切には、外部からの介入が必要です。神の御霊の介入であり、また、神の御子に私たちの世界に足を踏み入れていただき、私たちに別の道を示し、最終的には私たちの永遠の救いと喜びのためにそれを実行していただくことです。…
結局のところ、赦さない心を溶かし、固い心を和らげ、不親切な行いを変えるのは、神の優しさなのです。キリストにあって、私たちは他者に目を留めて、その人を憐れみ、寛容に接し、親切を示すような人間になります。それは、私たち自身がこれまで親切を示されてきただけではなく、「キリスト・イエスにあってわたしたちに賜わった慈愛[親切]による神の恵みの絶大な富を、[神ご自身が]きたるべき世々に示す」ようになることを知っているからです(エペソ2:7)。私たちは、私たちの神の親切さを味わい始めたばかりなのです。—デービッド・マシス [1]
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クリスチャンは、親切、優しい心、赦しを身につけなければなりません。この3つの徳は、対人関係にも関係しています。原語のギリシャ語では、「互いに親切にしなさい」と訳されている箇所の文字通りの意味は、「互いに親切にし続けなさい」です。イエス・キリストの中にも見出せる神の慈しみは、互いに親切にすることの意味を私たちに示しています。神が私たちに対して親切に振る舞われるのだから、私たちも他の人に対して同じように振る舞うべきです。…
憐れみと親切は密接に結びついています。憐れみは、「苦しんでいる人や困っている人に対する心からの同情や共感」と定義できます。親切は、誰かが困っているのを見て、良い行いを通じてそれに応えようとする精神です。つまり、親切とは、憐れみから生まれた目にみえる行動なのです。親切は単なる言葉にとどまりません。互いに助け合い、仕え合うことにつながります(使徒28:2)。—GotQuestions.org [2]
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誰もが影響力を持っている。一瞬一瞬、あなたの態度や幸福度は、ちょっとした言動に反映され、それが他の人に必ず影響を与えるのだ。あなたは普段、どのような影響力を持っているだろうか。
人にされて嬉しかったことを思い浮かべ、それと同じことを他の人にもするように心がけなさい。そうすれば、誰かの一日が明るくなるだけでなく、あなた自身がより幸せになり、人生をより前向きに捉えられるようになるだろう。
小さなことは大切だ。小さな親切は、愛と優しさの雰囲気を作り出せる。愛する人にどう愛を示すか、わたしにアイデアを求めなさい。また、その場の思いつきの親切の価値を過小評価してはいけない。親切な行いの連鎖反応を起こしなさい。そして、あなたの人生に愛が花開くのを見守りなさい。後悔することはないだろう。—イエス
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駐車場を歩きながら、私はジミーという患者さんに告げた「すい臓がん」という悲惨な診断のことばかり考えていました。ちょうどその時、私は年配の紳士が、エンストした車の下で作業している人に工具を渡しているのに気づきました。その人はジミーだったのです。
「ジミー、何をしているんだい?」 私は大きな声でそう言いました。
ジミーはズボンの埃を払ってから、「ガンがあるから人助けをするなってことはないよ、先生」と言い、車を発信させるよう老人に合図しました。エンジンが唸りを上げて動き出します。老人はジミーに礼を言い、車を走らせました。そしてジミーも自分の車に乗り込み、走り去ったのです。
教訓: 親切には限界も制限もない。—モハメッド・バシャ
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液体物の機内持ち込みが禁止されていることを忘れていた私は、空港のセキュリティーチェックで画材をすべて手放さなければなりませんでした。一週間後に帰国すると、係員が私の絵の具を持って手荷物受取所にいました。彼は私のために絵の具を保管してくれ、さらに、私を出迎えるために帰国日時まで調べてくれていたのです。—マリリン・キンセラ
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ジェイとトレバは、私たちが引っ越してきて以来、最高の隣人となってくれています。夫のジムが脳腫瘍になったとき、庭仕事や除雪を手伝ってくれたし、ジムが亡くなったときも、できることは何でもして、私を助けてくれました。食事、庭仕事、除雪、そして、私が忘れたときにゴミ箱を片付けてくれたり。今でも私のことを気にかけてくれていて、しばらく私を外で見ないときには、元気かどうか、倒れたりしていないかどうか、とメールをくれます。何が起きても、いつも私のそばにいてくれるから、頼りにしています!—シェリー・ゴーレイ [3]
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ルースが郵便受けを見ると、手紙が一通だけ入っていました。手に取って、開封する前に封筒を見たのですが、思わず二度見しました。切手も消印もなく、彼女の名前と住所だけが書かれていたのです。手紙を読むと、こうありました。
愛するルースへ
土曜日の午後、あなたの家の近所に行く予定なので、ちょっと寄りたいと思います。
変わらぬ愛を込めて、
イエス
手紙をテーブルに置く彼女の手は震えていました。「なぜ主が私を訪ねようとされるのでしょう? 私は特別な人間ではないし、出せるものなんて何もないわ」。そう考えながら、ルースはキッチンキャビネットが空っぽであることを思い出しました。「なんてこと、出せるものが本当に何もないわ。お店に行って、夕食に何か買わないと」。財布に手を伸ばし、中身を数えると、5ドルと40セントありました。「まあ、パンとコールドカットくらいは買えるわね」。そしてコートを羽織り、急いでドアを出ました。
フランスパン1本、ターキーのスライスを半ポンド、そして牛乳1パック。 … 12セントしか残らず、それで月曜まで生活しなければなりません。それでもルースは気分よく、客に出せるささやかな食べ物を小脇に抱えて家路につきました。
「ねえ、奥さん、ちょっと助けてもらえません?」 ルースは夕食のことで頭がいっぱいだったので、路地に身を寄せている二人の人影に気づいていませんでした。男性と女性、二人ともボロ雑巾程度の服装をしています。「奥さん、私は無職で、女房と二人でこの路上で暮らしているんです。寒くなってきたし、お腹も空いてきたので、もし助けていただけるなら、本当に感謝するのですが」。
ルースは二人を見ました。二人とも汚かったし、悪臭もしました。それに、ルースは、二人が本当にやる気があれば、何か仕事を得ることができるはずだと思いました。「旦那さん、助けたいのは山々ですが、私も貧しいんです。今は少しのターキーハムとパンしかなくて、今夜は大事なお客さまがいらっしゃるので、それをお出ししようと思っていたんですよ」。「ああ、わかりました。とにかくありがとう」。男は女性の肩に腕を回し、振り返って路地に戻って行きました。
二人が去っていくのを見ながら、ルースは覚えのある胸騒ぎを感じました。「待って!」 ルースが二人の後を追って路地を走っていくと、二人は立ち止まり、振り返りました。「この食べ物を持って行ってください。お客様にお出しするのは、何か他のものを考えますから」。彼女は男に食料品の袋を渡しました。「ありがとうございます、奥さん。ありがとうございます」。「本当にありがとうございます」。
ルースは男の妻が震えているのがわかりました。「家にもう一着コートがあるんです。ほら、これを着て」。ルースは上着のボタンを外し、女性の肩にかけました。
そして、ルースは微笑みながら、コートもなく、客に出せるものもないまま、車に戻って行きました。「ありがとう、奥さん! ありがとうございます!」 自宅の玄関に着く頃には、ルースは芯まで冷え切っていました。それに、心配していました。主が訪ねて来られるのに、出せるものが何もないのです。
彼女は財布を開けて、中に入っているドアの鍵を探しました。しかしそうしているうちに、郵便受けにまた封筒が入っていることに気づいたのです。「変ね。普通、郵便配達の人は一日に二回も来ないのに」。そして、郵便受けから封筒を取り出し、開けてみました。
ルースへ
また会えて嬉しかったです。おいしい食事、ごちそうさま。それに、素敵なコートもありがとう。
変わらぬ愛を込めて、
イエス
空気は変わらず冷たかったし、コートもなかったけれど、ルースはもう寒さが気になりませんでした。—作者不明 [4]
2024年5月アンカーに掲載 朗読:デブラ・リー 音楽:ジョン・リッスン