聖書が意味する「チャリティ」とは何なのか
Biblical Charity
July 28, 2020
引用文集
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ギリシャ語の「アガペー」は、英語欽定訳の新約聖書の多くの箇所で、「チャリティ(charity)」や「ラブ(love)」と訳されています。では、その違いは何なのでしょう。[訳注: 本記事における「チャリティ」は、慈善を意味する日本語の言葉ではなく、慈善の他に同胞愛、慈愛、慈悲、思いやりを意味する英語のcharityです。また、アガペーは、日本語訳聖書では「愛」と訳されています。]
何らかの形でのチャリティという言葉は、聖書に29回出てきており、そのすべてが新約聖書の中にあります。さらに、ローマ人への手紙より前には、この言葉はいかなる形においても聖書に出てきません。これは間違いなく新約聖書の言葉なのです。第1コリント13章にはチャリティという言葉が9回出てくることから、その章は聖書の中で「愛(チャリティ)の章」とされています。…
今日、人々はしばしばチャリティを、何か良い目的のためにお金を寄付することに過ぎないと考えます。しかし、聖書を見れば、聖書が示すチャリティは、お金を与えることがチャリティだとする間違った考え方とかなり異なることが分かります。第1コリント13:3には、「たといまた、わたしが自分の全財産を人に施しても、また、自分のからだを焼かれるために渡しても、もし愛(チャリティ)がなければ、いっさいは無益である」とあります。この聖句によれば、貧しい人が食べていけるよう全財産を施しても、そこに愛(チャリティ)がない場合もあるのです。つまり、お金を与えることが聖書の言うチャリティではないということです。…
チャリティとは、特に他の人に対する愛を指します。パウロは、私たちが弱い兄弟と接するにあたり、「愛(チャリティ)によって」歩むべきであると力説しています。[1] また、テサロニケの人たちのことを、「あなたがたひとりびとりの愛(チャリティ)が、お互の間に増し加わっている」と称賛しています。[2] ペテロは、第1ペテロ 4:8-9で、信者たちにこう言いました。「何よりもまず、互の愛(チャリティ)を熱く保ちなさい。愛(チャリティ)は多くの罪をおおうものである。不平を言わずに、互にもてなし合いなさい。」
ヨハネはこう言って聖徒たちを励ましました。「愛する者よ。あなたが、兄弟たち、しかも旅先にある者につくしていることは、みな真実なわざである。彼らは、諸教会で、あなたの愛(チャリティ)についてあかしをした。」[3] これらの聖句のすべてにおいて、チャリティは他の人々に対する聖徒の愛を表しています。ほとんどの場合、チャリティは「互いに」、「あなたがたの間で」、「兄弟たちに対して」示されるものとして語られており、それは他の信者たちのことを指しているのです。一つの場合においては、[4] 見知らぬ人(旅先で会った人)も含まれています。しかし、これらすべてにおいて、神は信者が他の人々に対して持つべき特別な愛に言及しておられます。
「愛」全般の重要性を説いた聖句は数多くありますが、聖書はある特定の種の愛を指し示すために、「チャリティ」という愛について語っています。チャリティとは、他の人たちへの愛であり、それは忍耐強く、情け深くあるものです。[5] 礼を失せず、自分の利益を求めず、すぐにいらだたつこともしません。[6] 他の人の不義を喜びません。[7] そして、忍び、信じ、望み、耐え続けるのです。[8] これこそは、信仰と実践において成熟した信者であることを証明する品格です。どうか主が私たちにもっと多くの愛(チャリティ)を与えてくださいますように。—デービッド・レーガン [9]
最高の形の愛
キリスト教思想において、「チャリティ(愛)」は愛情の最高の形態であり、神と人との間にある相互の愛を表す。そして、それは同胞に対する無私の愛に現れる。聖パウロは、新約聖書の中でこの愛(チャリティ)について有名な記述をしている。[10] キリスト教神学およびキリスト教倫理において、愛(チャリティ=ギリシャ語のアガペーの訳)は、イエス・キリストの生涯、教え、死の中に最も雄弁に示されている。聖アウグスティヌスは愛(チャリティ)に関するキリスト教思想の多くをまとめて、「愛(チャリティ)は、私たちの愛情が完全に秩序づけられているときに、私たちと神とを結びつける徳である。それによって私たちは神を愛するからである」と記した。…
宗教改革の論争は、希望や愛(チャリティ)よりも信仰の定義を扱ったが、改革論者らは、人間に対する神のアガペーの独自性を無償の愛として認めた。したがって彼らは、人間の人間に対する愛情としての愛(チャリティ)は、その受け手となる者の好ましさに基づくのではなく、神のアガペーの力によって与え手が変わることに基づくべきであるとした。—ブリタニカ百科事典 [11]
アガペーの愛
「愛」と訳される言葉は幾つかありますが、それぞれが新約聖書のギリシャ語原文では異なる意味を持っています。ギリシャ語で愛を指す言葉の一つは「エロス」で、恋愛感情や性的愛情(性愛)を表しており、新約聖書には出てきません。愛と訳されるもう一つの言葉は「フィリア」で、愛おしいという気持ち、深い友情(友愛)、人間愛、思いやり、兄弟愛を表すのに使われています。3つ目の言葉は「ストルゲー」で、家族の成員に対する愛(家族愛)、特に親から子どもへの愛に関係しています。
4つ目は、愛を表すために新約聖書で最もよく使われている言葉で、「アガペー」です。聖書の使われ方で分かるように、それは神の愛を意味します。たとえば、第1ヨハネ 4:8の「神は愛である」という箇所のギリシャ語原文では、アガペーが使われています。神がされることは全て、その愛が動機であり、元になっています。アガペーは、私たちが神に対して抱く愛[12] や、キリストが愛するように他の人たちに示す愛をも指しています。
福音書や書簡で読む愛(アガペー)は、自分よりも他の人が必要とするものを優先することを選び、不便を被ってもそれに甘んじ、他の誰かの益のために自らの意思で不快なことに耐え、しかも、何の見返りも期待しないものです。善意や忠実さ、献身、力強い品性を示す愛です。イエスが表しておられた愛であり、私たちがイエスと共に永遠に生きることができるよう、ご自身の命を犠牲にする動機となった愛なのです。アガペーの愛は、イエスが表された犠牲的な愛であり、私たちもそれにならうよう求められています。
英語欽定訳聖書では、アガペーを「チャリティ(charity)」と訳している箇所が多くあり、それが寛大で無私の愛のことだと理解しやすくなっています。それは、自分のためにしてほしいことを他の人にしてあげることです。イエスの愛にならえとは、気楽にいられる親しい仲の人や、あなたから愛されるに値すると思える人だけを愛していればいいということではありません。あなたの愛に値しないと感じたり、相手の考え方や信じ方、行動の仕方に同意しないような場合であっても、その人を愛するということです。何と言っても、イエスは私たちに、敵を愛し、自分を不当に扱い侮辱してくる人を愛しなさいと言われたのですから。
使徒パウロは、愛(アガペー)とは何であり、何をなすのか、そしてどのように表されるのかを明確に示して、愛の形を表現しました。それは、よく「愛の章」と呼ばれる第1コリント13章に書かれています。—ピーター・アムステルダム
互いに自分のことよりも相手のことを考える
「何事も党派心や虚栄からするのでなく、へりくだった心をもって互に人を自分よりすぐれた者としなさい。おのおの、自分のことばかりでなく、他人のことも考えなさい。」[13]
これは、聖書に記されたチャリティ(愛)の完璧な定義です。繰り返しますが、チャリティとは必ずしも金銭を与えなければならないという意味ではありません(もちろん、それも含まれますが)。実際、お金や十分の一献金をただ手渡すよりも、もっと大きなものであり、私たちの心の奥深くにあるものなのです。もし私たちがチャリティに満ちているならば、自分のことよりも他の人のことを気にかけるようになるでしょう。自分のことを話すよりも、他の人の悩みを聞いてあげたいと思うようになります。つまり、聖書によれば、チャリティの愛に満ちるというのは、お金から時間まで、人生のあらゆる部分を犠牲的に与えることなのです。
聖書におけるチャリティとはどのようなものかを知るには、ただイエス・キリストに目を向けてください。イエスの人生を通して、チャリティの典型を見ることができます。イエスは、ご自身の人生やキャリアや人気を気にしませんでした。主が気にかけたのは、人々のことです。ヨハネによる福音書15章13節で、イエスはこう言っておられます。「人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない。」 これこそ、人が知る最も偉大なチャリティであり、イエスは私たちのために十字架にかかることで、この愛を実践されました。イエスのチャリティを促したのは愛でした。愛がなければ、チャリティはある種の利己的な理由のために行われる善行でしかありません(第1コリント13章はそれを見事に表現しています)。ですから、聖書が言うチャリティの意味を本当に知りたいのであれば、イエスを見てください。—マイケル・クラウザー [14]
2020年7月アンカーに掲載 朗読:ガブリエル・ガルシア・バルディビエソ
音楽:マイケル・ドーリー
1 ローマ 14:13–15.
2 2テサロニケ 1:3.
3 3ヨハネ 1:5–6.
4 3ヨハネ 1:5–6.
5 1コリント 13:4.
6 1コリント 13:5.
7 1コリント 13:6.
8 1コリント 13:7.
9 http://www.learnthebible.org/charity-or-love.html.
10 1コリント 13.
12 マルコ 12:30.
13 ピリピ 2:3–4.