「豊富論者の陣営」と「不足論者の陣営」

7月 25, 2024

Camp Abundance versus Camp Scarcity
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マラ・ホドラー

ある友人が話してくれたのですが、まだ幼かった頃、彼女の家は仲が良くて温かな家庭ではあったものの、「公平」かどうかということで、いつももめていたそうです。母親がデザートにパイやアイスクリームを買って帰ると、誰かの取り分が大きいといったことで兄弟ゲンカになるのです。子どもたちがデザートの大きさについて騒ぎ立てるのが嫌で、母親はダイニングテーブルの近くに秤を置いて、全員が同じ量をもらえるよう、グラム単位できっちり量っていたそうです。それは家族の方針として何年も続きました。

この話を聞いて思ったのですが、私たちはよく、「パイはこれだけしかない」という見方で人生を見てしまうのではないでしょうか。たとえば、母親がデザートにパイを出し、兄にまず大きな切り分をあげたとしたら、それは、あなたの分が小さくなってしまうということですよね。しかし、言うまでもなく、パイに関しては確かにそうだったとしても、人生に関するほとんどのことは、そういうものではありません。

それなのに私たちは、何でも「不足」していると信じるか、「豊富」であると信じるかのどちらかである傾向にあります。

「不足論者の陣営」にいる人は、愛、アイデア、チャンス、想像力、リソースには限りがあると信じます。そのいずれもが、まるで切り分けられたパイのように、誰かが一切れもらうたびに、自分の分は少なくなっていくのだと。ご想像どおり、「不足論者の陣営」の人に助け合いの精神はほとんど見られません。自分の身は自分で守らなくてはいけないのです。そこで、何のためらいもなく、他の人が持っているパイを奪います。戦って取り分を確保しないなら、何も得られないからです。運よくパイを手に入れることができたとしても、ゆっくり楽んではいられません。誰かが奪いに来る可能性は常にあるので、急いで食べてしまわなくてはならないのです。私も「不足論者の陣営」にいたことがありますが、そこはまったく気がめいる場所です。

「豊富論者の陣営」は真逆です。「豊富論者の陣営」では全員が、愛やアイデア、チャンス、想像力、リソースは無限だと信じています。だから、頻繁にお祝いをするし、たくさんのパイを楽しんでいます。誰かが美味しいパイの店を発見すると、内緒にしておくのではなく、全員にその店を勧めます。また、レシピをお互いに交換し、改善して、自分好みのものにしていきます。この陣営で確実に言えること、それは「パイが足りなくなる人は一人もいない」ということです。それどころかほとんどの人は、これからさらに良いパイが作られ、それを楽しみ、分かち合えると信じているのです。

まったくおかしなことに、「不足論者の陣営」では、パイが実際にどんどん少なくなっていくようです。最後の一口になってしまう日のことを皆が心配しています。その後はどうなってしまうのかと。愛やアイデア、想像力、リソースは尽きてしまうのでしょうか。幸せや良いことも尽きるのでしょうか。この人たちは誰も、神とパイを結びつけて考えたりしません。自分で何とかしないといけないので、パイを手に入れるチャンスがある内にそうした方がいいと考えるわけです。

けれども、「豊富論者の陣営」では、パイがなくなることを心配している人はいません。常にパイを作る新しい材料を考え出したり、昔ながらのレシピに新たな工夫を加えたり、パイを輸送する新しい方法や、より効率の良いパイ作りの方法を考えます。「あらゆる良い贈り物、あらゆる完全な賜物は、上から、光の父から下って来る。父には、変化とか回転の影とかいうものはない」(ヤコブ1:17)と理解しているのです。神が「もうパイをすべて与えたので、これで終わりにしよう」と判断する日が来るのではないかと心配する人など、誰もいません。

私がこの二つの陣営の存在に初めて気づいた時、悲しいことに、自分はかなり多くの時間を「豊富論者の陣営」よりも「不足論者の陣営」で過ごしていたという結論に達しました。「これからさらに良いことが起こる」と考えることはめったになく、それよりも「もうすぐ厄介なことが起こるだろう」と考えることの方が多くありました。また、他の人に幸運が訪れると、その分、自分の「運」は少なくなったかのように感じることもよくありました。間違いなく、私は「豊富論者の陣営」での喜びを味わいそこねていたのです。

そこで私は、荷物をまとめて陣営を移動しました。すると、「豊富論者の陣営」は私を歓迎してくれたのです。「多い方が楽しい」というのが彼らの主義であるのは間違いありません。私は、自分にとっても、家族・友人やまわりの人たち皆にとっても、これから最高のことが起こると信じるようになりました。

気がつくと、私には分かち合うことのできるものがたくさんあったのです。アイデアやリソース、チャンス、愛が尽きることはありませんでした。ため込まなくても良いのだとわかると、惜しみなく与えることは難しくありません。他人の幸運も素直に喜べるようになりました。幸運というものは、自分のところにも回ってくるだけ十分にあるのだとわかっているからです。「豊富論者の陣営」に移ったのは、大正解でした。

このパイの話には、あなたの人生のモデルとなる二つの思考体系が示されており、どちらの思考体系を取り入れるにせよ、それがあなたの現実となっていきます。聖書には、こうあります。「惜しんでわずかしか種を蒔かない者は、刈り入れもわずかで、惜しまず豊かに蒔く人は、刈り入れも豊かなのです。」(2コリント9:6 新共同訳)

あなたには、どちらの陣営で過ごしたいかを決める力があります。あなたは、愛やアイデア、リソース、チャンスが減少を続け、常に欠乏した状態にあるような陣営にいたいでしょうか。それとも、これからさらに最大の機会や最高のアイデア、豊かなリソース、深い愛が生まれ、全員に十分行きわたるぐらいにある陣営にいたいでしょうか。どちらの陣営(あるいは現実と言ったほうが良いでしょうか)にすべきか、どうぞ慎重に決めてください。

若者向けのキリスト教的人格形成リソース「Just1Thing」ポッドキャストより、一部変更

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