10月 28, 2023
昨今、私たちは、世界中の多くの人にとって、間違いなく「苦難の時」となっているのを目の当たりにしています。現代的なテクノロジーによって、地球上のあらゆる場所で起きていることがリアルタイムで見られることで、ある意味、前代未聞のレベルで目撃しているとも言えます。人種等を理由とする差別や偏見、権力と暴力の問題、有力者の汚職、個人的自由と市民の義務との境に関する疑問などが、大きな課題となっていることも目にしてきました。私たちは確かに、多くの面で苦難の時を生きています。
言うまでもありませんが、いつの時代にも、その時代なりの課題や苦悩、成長痛があったと覚えておくことは大切です。歴史を振り返ってみれば、このようなことは絶えず繰り返されているのです。それは、クリスチャンにとって驚くべきことではありません。なぜなら、私たちが住んでいるのは堕落した世界であり、罪はあらゆる時代において、貧困や抑圧、戦争、残忍行為など、さまざまな悪となって現れていて、私たちはその実態に立ち向かわなければならないものだと知っているのですから。それはちょうど、伝道の書にこう書かれているとおりです。「先にあったことは、また後にもある、先になされた事は、また後にもなされる。日の下には新しいものはない」(伝道の書 1:9)。私たちは世界の状況に驚かされたりはしません。なぜなら、人類が持つべき神との関係が破綻しており、その影響でこのような状況が生じていると知っているからです。
ただ、クリスチャンにとっての究極的な希望は、この世界やその政治体制にはありません。それはすべてつかの間のものであり、いずれ過ぎ行くものですから。私たちは、ヘブル書に書かれている、「いつまでも続く都をこの地上に持っているのではなく」、「もっと良い故郷、すなわち天の故郷」を熱望している者たちの中に、自分も数えられると考えているのです(ヘブル 13:14, 11:16 新改訳2017)。私たちはイエスの再臨を心待ちにしています。その時が来れば、痛みも苦しみも悪もすべてなくなり、不正は正され、「水が海をおおっているように、主を知る知識が地に満ちる」とあります(イザヤ 11:9)。ヨハネが黙示録の結びに、「アーメン、主イエスよ、来てください」と記してから、ほぼ2千年が経ちました。それから今日に至るまで、信者たちは、心から同じ気持ちでいます。
多くのクリスチャンは、昨今の出来事や現代文化がイエスの再臨のタイムラインとどのように関係しているかを理解しようとしてきました。現代のテクノロジー、グローバリゼーション、広く伝わってきた福音、キャッシュレス経済への移行、世界的に広まったデジタル通貨など、現在の世界の状況は、私たちが、イエスの再臨に先立つ最後の7年間にすでに入った、あるいはまもなく入ろうとしているという「しるし」なのかということです。私たちは、終わりの時との関連性という点において、昨今の出来事をどのように解釈すべきなのでしょうか。また、どんな結論が導き出されるでしょうか。
そのような質問への答えは、何よりもまず聖書から、つまり、イエスの再臨の直前の期間について聖書が教えていることを総合的に見て、導き出されるべきです。言うまでもなく、そのような出来事がどのように展開していくかについては、私たちが望むほど詳細には記されていません。それでも、聖書は、私たちが見るようになる事柄の概要を明確に提供しており、それらは総じて「時のしるし」と言われています。その幾つかを見ていきましょう。
「また、戦争と戦争のうわさとを聞くであろう。注意していなさい、あわててはいけない。それは起らねばならないが、まだ終りではない。民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに、ききんが起り、また地震があるであろう。しかし、すべてこれらは産みの苦しみの初めである」 (マタイ 24:6–8)。ルカの福音書では、しるしのリストに疫病も含まれています(ルカ 21:11)。
歴史を見てみると、「産みの苦しみの初め」と言われた出来事が、イエスの時代以降ずっと起きていることが分かります。このイエスの初臨(最初の到来)と再臨の間の期間が、「終わりの時(終末)」と呼ばれているものです(1 ヨハネ 2:18)。これまでずっと、戦争と戦争のうわさとがありました。ただ、歴史の特定の時期においては、たとえば2つの世界大戦があった20世紀前半など、現在よりも激しい戦争が起きたこともあります。また、飢饉や疫病や地震はこれまでずっとあったし、今もあります。イエスは、すべてこれらは産みの苦しみの初めに過ぎないと言われました。
私たちは時のしるしを見分けるにあたって、ただ一つのしるしだけに目を向けるのではなく、「すべてこれら」の時のしるしを総合的に見なければいけません。これらのしるしは、主にダニエル書と黙示録にありますが、他にもマタイ24章、第1・第2テサロニケ書といった新約聖書全体に渡り、またさまざまな聖書の預言の中に、数多く見つけられます。
しかし、聖書には、それを見て終わりが「戸口まで近づいている」(マタイ 24:33)と分かるような明確なしるしが幾つか記されているのです。たとえば、私たちが目にするようになると聖書が告げていることの中には、以下のようなことがあります。
昨今の出来事や世界情勢に関してさまざまな解釈がなされています。特定の政治的出来事やキャッシュレス金融システムは私たちが最後の7年間に突入していることを示しているといったものがあり、そういうことを耳にすると、不安になることもあるでしょう。そのような解釈を信用すべきかどうかを考えるために踏むべき最初のステップとは、イエスの再臨の直前の期間に関して聖書が語っていることに照らし合わせてみることです。どのしるしについても、聖書に書き記されている詳細を見ていく必要があります。例えば、獣の刻印について、聖書にはなんと書かれているでしょうか。すでにそれが秘密裏に導入されている可能性はあるでしょうか。
聖書に記された情報によれば、獣の刻印は、契約が破られた「後」に導入されるものであり、反キリストとその統治が支持されて、反キリストを拝むことが受け入れられることと関連しています(黙示録 11:13–18)。私たちは、「不法の者」(反キリスト)が現れて、「神に対抗して自分を高く上げ」、「自分こそ神であると宣言して、神の宮に座る」といった、獣の刻印に先立つしるしを見てきたでしょうか。(2 テサロニケ 2:3–4 新改訳2017)。
黙示録14:9–11には、こうあります。「誰でも、獣とその像を拝み、額か手にその獣の刻印を受ける者は、その者たちも、神の怒りの杯に注がれた、混ぜものなしの怒りのぶどう酒を飲むことになる」。獣の刻印を受けることについて聖書に書かれてあることによれば、それが獣とその像とを拝むことと関連していることが明らかです。
反キリストがまだ台頭しておらず、その統治が目に見えていない今、刻印を受けて反キリストを拝むかどうかの選択を迫られていないというのに、獣の刻印を与えられるということがありうるのでしょうか。さまざまな説や解釈を考慮する際には、このようなことを自問しなければいけません。聖句を研究し、比較検討して、「真理の言葉を的確に扱い、熟練した教え方ができるように」なるべきなのです(2 テモテ 2:15 英語詳訳聖書より)。
毎日が過ぎるごとにイエスの再臨が近づいていることは間違いなく、私たちクリスチャンはこの勝利に満ちた出来事を、期待に胸を膨らませて待ち望んでいるし、そのための備えをしたいものです。私たちが生きている内に主の再臨を経験するのでしょうか。それは、イエスや他の人たちが聖書に残した決定的なしるしが成就するのを見るまでは、分かりません。
では、イエスに従う者たちとして、私たちがなすべき備え方とは何でしょうか。イエスはマタイ24章で、弟子たちが終わりの日々に直面するようになることを説明した後、こう語られました。「だから、あなたがたも用意をしていなさい。思いがけない時に人の子が来るからである」。それからイエスは、常に用意した状態で生きるにはどうすべきなのかという、彼らの頭の中にある質問に答えるかのように、続けてこう言われました。
「主人がその家の僕たちの上に立てて、時に応じて食物をそなえさせる忠実な思慮深い僕は、いったい、だれであろう。主人が帰ってきたとき、そのようにつとめているのを見られる僕は、さいわいである。よく言っておくが、主人は彼を立てて自分の全財産を管理させるであろう」(マタイ 24:45–47)。
イエスはここで話の焦点を忠実さに移し、忠実な思慮深い僕について話をされました。この僕は、主人から家の者たちを世話する責任を与えられ、その務めを勤勉に果たしています。主人がいつ戻ってくるのかは知らないけれど、それは彼にとって大切なことではありません。ただ自分の仕事を忠実に行うことに専念しているのです。主人が帰ってくると、この僕は祝福を受けます。
私たちが、神の言葉にしたがって人生を形づくり、主に近く従い、できるだけ多くの人にイエス・キリストにおける信仰による救いの良き知らせを伝えることに忠実であれますように。私たちが生きている間に世界史の最後の7年間をじかに見られるかどうかと関係なく、神が私たちを地上に置かれている間、私たちがどのように生きるのか、最終的にはそれが重要なことです。
私たちは、神を愛し、他の人を愛し、福音を伝え、最善を尽くしてイエスの教えに生き、それを他の人に教えるという召しをいただいています。これらのことに忠実であるなら、何が起ころうと、私たちには備えができているのだと確信できます。
初版は2021年5月 2023年10月に改訂・再版 朗読:ジョン・マーク
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