「ロードマップ」シリーズより
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私たちの人生は、日々の選択の結果であり、毎日が、私たちの未来を導く決断をする機会です。目の前の仕事を最善を尽くしてこなすか、あるいは、必要最低限の力しか出さず、平凡な仕事でよしとするか、という決断をする機会なのです。
私たちは、ただ平凡に必要最低限をこなそうとするか、あるいは、その場に応じて懸命に働き、ゴールを実現していくのか、日々、意識的に決断します。私たちの誰もが、半分しかエンジンのかかっていない状態で眠そうに過ごし、特に変わったこともない日を毎日だらだら過ごすこともできれば、毎日、毎週、毎年、熱心に自分の人生を見直し、改善し、新たなレベルの成功を達成していくこともできます。
平凡さを完全に打ちのめすことで、より充実した人生を送るにはどうしたらいいか、考えてみましょう。
一人一人が選択する
私たちは毎日多くの選択をします。次から次へと選択をしながら、最終的に人生のコース、未来のコースが定まっていきます。人生の質は、魔法のように現れるのでありません。未来に向けて正しい軌道に乗せるような良い選択をする中に魔法があるのです。さらに、私たちの選択によって最終的に人生が形成されると認識するところに魔法があります。未来の人生は、たとえ悪いことが降りかかってきても、情熱とコミットメントと決意に満ちたものになるでしょうか? 私たちは、リソースや資金が限られていたとしても、機会をつかみ、進歩を遂げていきますか?
最終的に、あなたの選択があなたの人生の道を導きます。それはかなり驚くべきコンセプトですが、真実です。私たち一人一人が、状況に応じて決断をすることによって、その状況にどう影響されるかを決断します。
これは時に受け入れがたいコンセプトです。私たちは普通、正しい選択をしようとする前に、まず状況が変わってくれたらと願うからです。でも、そのコンセプトを受け入れるなら、状況がどうであれ、それを神に委ね、人生について神の計画を信頼すると選択するなら、私たちの人生は変わります。もっと力を感じ、自分が犠牲者であるとはそれほど感じず、主が自分の人生を掌握しておられるのだと感じるようになります。
八方塞がりで、自分で選択をしているわけではないと思うと、自分が犠牲者のように感じるものです。状況が全く自分の手には負えず、状況を変えようとするなど無駄であると信じる罠にはまることが、誰しも時にはあるものです。しかし、自分にできる選択について責任を持つならば、犠牲者メンタリティーから抜け出て、「神にはなんでもできないことはない」という力強い思考様式が持てます。
そう思わない人が多いですが、通常、神が私たちのために選択されることはありません。私たちは自分で選択をして、自分のための神の御心を見つけなくてはいけないし、神の御心を知るために熱心に神を求めなければなりません。神はまさにそのために私たちをこの地上に置かれたのです。神との個人的な接触や、神の言葉と神の御心についての知識や、神や他の人たちへの愛を通して、正しい決断の仕方を学ぶこと、それこそ、私たちがこの地上で学ぶべきことであり、私たちの一番大切な訓練です。私たちは、自分で正しいとわかっていることを行い、また、真実だと知っていることのために生き、そのために死ぬだけの覚悟ができていなければなりません。
でも神の言葉にある通り、「各自はそれぞれ、確信を持っておるべきである。」 自分が正しいことを確かめたら、誰が何と言おうと構わず、正しいと自分でわかっていることをしましょう。誰かがしろと言ったからではなく、自分が、それが神の御心だと確信しているが故に、それを行うのです。—デービッド・ブラント・バーグ
自分の選択は自分の責任だと受け入れるなら、その選択から生じる困難や辛いことについて、人や状況のせいにすることはないでしょう。そして、どう生きるか、どうやって大宣教命令を果たすか、どう生計を立てるかなど、自分の人生に責任を取るようになります。最終的に、私たちの人生は、日々の決断を反映したものなのです。
自己鍛錬・自制の役割
人生で追求すると選んだことが何であれ、それについて成功しようと決めて、数年先に目指す高尚な目標を定めるのは割と簡単ですが、実際にその目標に到達するのは、はるかに難しいことです。達成というのは、こうなればと考え、願い、望むことではないし、さらには計画することでさえありません。行動することなのです。計画は大切ですが、壮大な計画を立て、ものすごい目標を立てても、行動に移し、耐え忍び、その目標に到達すべく取り組まないなら、あまり意味がありません。望むところに到達し、達成したいことを達成するには、自己鍛錬を要します。私たちは人生や優先順位、スケジュール、休み時間を見直し、自分のしている、あまり生産性のないことについては厳しく見直さなければなりません。そうすれば、変える必要のあることを変え、その目標に到達するために必要なだけの自己鍛錬をすると決意できるのです。
私たちは皆、自分自身にハッパをかけないといけません。何というコンセプトでしょうか。つまり、人生で成功したいなら、あるいはどんな試みにおいても成功したいなら、自己鍛錬が求められるのです。目標に達するというのは必ずしも、人生で起こることを何でもそのまま受け入れるという意味ではありません。成長し、目標を達成することを願うなら、何かの職業やキャリアや何かの分野の研究を追求したいなら、あるいは、献身的に使命を果たしたいなら、また、責任を果たし、違いをもたらしたいなら、自己鍛錬をしていくことがとても大切です。
全く目標達成ができていないように思うなら、さらには、目標を持ってさえいないのなら、対策としてできることがあります。自分にハッパをかけるのです。
それには、自制心を育まないといけません。自制心――これは嫌な言葉でしょうか? いえ、ぐさっとくる言葉、落ち着かない気持ちにさせる言葉かもしれませんが、実際、自制心こそが成功を達成する鍵だということを考えると、パワフルな言葉です。自制は簡単ではなく、大変なものであり、辛いこともあります。しかし、自分のなれるすべてになりたいなら、最高の自分になりたいなら、そういう代価を払わないといけないのです。
自制(discipline)という言葉は、信奉者(disciple)から派生しています。何かの思想、原則、価値観、最も重要な目的を信じる者。より高い目標あるいはその目標を体現する人を信じる者。
つまり、あなたが効果的に自己管理する人であるなら、自制は内から湧き出ます。それは自由意志による機能なのです。あなたは、自分自身の深い価値観やその源に従います。意志と誠実さを有しているのであり、感情や衝動や気分を、そうした価値観に服従させるのです。
私の大好きな論文の一つに、アルバート・E・N・グレーが執筆した『The Common Denominator of Success(成功者の共通点)』と題するものがあります。彼は、成功者たちに共通する要素の探求に人生の大半を費やしました。その結果、熱心な努力や幸運、あるいは人間関係における手法などはどれも必要ではあるが、決定的な要因ではないということが分かったのです。何よりも大切だったのは、「重要事項を優先する」ということでした。
グレー氏はそのことを次の言葉で表現しています。「成功者たちの共通点は、成功していない人たちの嫌がることを実行に移す習慣を身につけているということです。彼らにしてみても、必ずしも好きでそれを行なっているわけではないが、自らの嫌だという感情をその目的意識の強さに服従させているのです。」—スティーブン・R・コヴィー [1]
うれしいことに、自制がうまくできるようになればなるほど、より簡単になります。
偉大な達成をする人は必ず自制心を持っています。‥‥[だが]自分を律して、する必要のあることを、する必要のある時にすると、自分がやりたいことをやりたい時にできる日が訪れるものです。また、人生は厳しいが、自分に厳しくあれば、人生はあなたにとってはるかに楽になります。
今日、自分を律することで、明日、よりよい人生を手に入れなさい。—ジグ・ジグラー [2]
ただ幸運による成功というのは稀です。確かに、ちょうどいい時に、ちょうどいい場所にいただけで金鉱を掘り当てるという珍しいケースもないわけではありませんが、大抵の場合、自分の立てた目標に到達するかどうかは、自己鍛錬をし、順序立ててコツコツと進めるかどうかにかかっています。そうすれば、チャンスが訪れた時に、手を伸ばして、そのチャンスをつかむ準備ができているのです。
ゴードン・マクドナルドはその著書『The Life God Blesses(神の祝福する人生)』の中で、50年代の終わりの、コロラド大学陸上チームでの経験について語っていますが、特に、ビルというチームメートとのワークアウトが大変だったと話しています。「今日に至るまで、毎週月曜の午後のワークアウトは辛い思い出です。月曜のワークアウトが終わると、へとへとになってロッカールームに行ったものです。」 でもビルは違いました。彼はワークアウトを終えると、トラックの脇の芝生で休み、20分ぐらいすると、ゴードンがシャワーしている間に、ワークアウトをまた最初から一通り繰り返すのです!
ビルは自分のことを大学で目立って優れたアスリートだとは考えていませんでした。こんな風に言っています。「僕は大したアスリートではなかったけれど、『あの手この手』理論を持っていて、どういうことかというと、トレーニングや競技で一つの派手な動きはできなくても、小さなことなら出来ることが何千もあるということです。」
ビルは大学時代はこれといった成績は残さなかったけれど、時間が経つにつれ、彼の自己鍛錬と願望は報われました。自制心による努力と継続的な改善を通して、ゴードン・マクドナルドとワークアウトをした目立たない大学生アスリート、ビル・トーミーは、世界的に有名なアスリートとなり、1984年に10種競技でオリンピック名誉殿堂入りしました。
ビルがそれほどの偉業を達成できたのも、自己鍛錬のおかげでした。それは、ゴードン・マクドナルドがこう言っている通りです。「私たち2人の違いは、月曜午後のワークアウトに始まりました。彼は自己鍛錬を厭わず、最大限のことをしたけれど、私はそれを嫌い、最低限で済ませたのです。」—ジョン・C・マクスウェル [3]
「時間がない‥‥」
一番よく聞くのは、「時間がない」という言い訳であり、私たちは皆、その言葉を数え切れないほど口にします。最初は、もっともな言い訳に思えます。確かに私たちは忙しいのですから。
でも、どんな風に時間を使っているでしょうか? 毎日の例を見てみましょう。例えばテレビ。最近の調査によると、現代のアメリカ人は平均、毎日約5時間、週に35時間テレビを見ます。平均的なアメリカ人視聴者は一ヶ月に151時間以上テレビを見ているのです。アメリカ人は平均して週に40時間働くので、仕事とほぼ同じだけの時間をテレビを見て過ごすということです。
あなたがそれほどはテレビを見なかったとしても、コンピューターゲームはどうでしょう? ブログや、オンラインのチャットは? ネットサーフィンは? その時間を合わせたら、どうでしょうか?
何かのトピックについて1日1時間勉強をした場合、1万時間後、あるいは約5年後には、その道の専門家になるという概念を聞いたことがあると思いますが、私たち一人一人、何の専門家になりたいでしょうか? 私たちの時間の過ごし方はそれを証明していますか?
自分のなりたいプロフェッショナルになるために読書し、勉強するでしょうか? 関心のある分野や秀でたい分野の読書や勉強をしていないなら、可能性を100%発揮してはいないということです。
以下の例を考慮してみてください。
ジョン・グリシャムは作家を本業とする前、弁護士をしていました。成功している弁護士なら誰でもそうですが、事務所で長時間仕事をし、週60時間はざらで、多いときは80時間でした。この過酷なスケジュールにもかかわらず、グリシャムの小説を書きたいという思いは何にもまさるものでした。
グリシャムには、本を書けないことについて、体のいい言い訳はいくらでもありました。例えば、「創作的」文章を書いた経験がない、妻と2人の子どもを養う責任がある、週に6日、1日10時間仕事をしているから時間がない、仕事でものすごいストレスを抱えている、などです。
でもグリシャムは自分には選択があると知っていました。小説を書く理由を見つけることもできれば、書かない理由を見つけて、できない理由について自分を正当化することもできるのだと。幸い、グリシャムは処女作を書く理由を見つけることを選びました。
彼は、生活で一つ簡単な調整をして、処女作『評決の時(原題:A Time to Kill)』を書き上げました。朝5時に起きて、執筆に取り組むようにしたのです。事実上、執筆時間はなかったので、毎朝、2時間早く起きてその時間を作ったわけです。1年も経たない内にグリシャムは出版社に送る原稿を完成しました。
ただ問題が1つありました。最初の出版社は、「せっかくですが、結構です」と言い、2社目、3社目、4社目、と繰り返し同じ返答だったのです。しかし、グリシャムの決意は固く、原稿を提出し続けました。そして26社目にしてやっと良い返事がもらえました。
出版社はその本が売れるという確信はあまりなかったので、5000部しか印刷しませんでした。それでも、1000部で充分だったくらいです。失敗に終わりました。
そこでグリシャムは次なる選択をしました。自分で1000冊購入して、マーケティングをすることにしたのです。週末に本についてトークをしてサイン会をするということを何ヶ月も続けて、ついにその努力が報われる日が来ました。
1年間、自ら週末にあちこち出向いた結果、口コミで評判が広がっていき、ジョン・グリシャムの処女作『評決の時』はベストセラー入りし、それが100週間続いたのです! 今日までに、グリシャムの処女作は1000万部以上印刷されました。
グリシャムがその偉業をなしえたのは、習慣を変えたからです。‥‥朝5時に起きるという新しい習慣を築いたことで、生涯の夢を実現できました。1日2時間、生産性の高い時間を加える習慣を築くことにより、ものすごく大きな違いをもたらせます。それは、自分の人生に、一年あたり15週間分の生産性のある労働時間を加えることになるのです。—バーク・ヘッジズ(一部変更) [4]
長期的に言って、自己鍛錬は報われるし、それは私たちの人生でも起こり得るのです。
自己鍛錬によって、ほぼ全てのことは可能になる。—セオドア・ルーズベルト
神にはなんでもできない事はない。—イエス(マタイ19:26)
「ロードマップ」は若い大人向けにTFIによって制作されたビデオ・シリーズ。初版は2010年。2017年7月に改訂の上、アンカーに掲載。朗読:サイモン・ピーターソン。