セルフコントロールと誘惑を避けること(パート2)

5月 11, 2017

Self-Control and Avoiding Temptation—Part 2
May 11, 2017

「ロードマップ」シリーズより

オーディオ所要時間: 11:36
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自分の感情に大きく影響される人々がいます。否定的な感情でない限り、それは必ずしも悪いことではありません。しかし、もしあなたが、腹を立てたりかんしゃくを起こし易い傾向にあるとか、苛立っているか気が動転している時に運転すると、ついスピードを出しすぎてしまうとか、悲しい時や孤独な時にやけ酒を飲む、といった行動に走る人であるなら、感情をコントロールすることを学ぶのは大切です。感情を制御するといっても、感情を殺して自分の気持ちを一切表に出さないという意味ではありません。

感情を制御するとは:

状況に過剰に反応しない。

少し立ち止まって、物事を総合的視野から見直す。

感情によって人生を駄目にしてしまうのではなく、むしろそれによって人生の質がさらに高められるよう、しっかりと感情のコントロールができている。

感情を有害な敵とするのではなく、頼もしい味方とする。—バーク・ヘッジズ著 『You, Inc.』 [1]

以下の実話について考えてみましょう。

その運動選手がまだ幼い少年だった頃、彼が特別な身体的賜物に恵まれていることは、誰の目にも明らかでした。彼は何でもスポーツなら大好きで、手がけるどんなスポーツにおいても優秀でした。

9歳の時、彼は父親からゆがんだテニスラケットを手渡され、それを初めて一振りした瞬間から、夢中になってしまいました! ほどなくして彼は、テニスで国中の同年代の子たち全員を負かすようになりました。

12歳の頃には、国内でもトップレベルの大人の選手たちを、頻繁に打ち負かすようになり、プロのテニス選手たちと渡り合うこともありました。誰もが、彼はいつの日かチャンピオンになるだろうと予測しました。ただ、自分の感情をコントロールすることさえできたなら、と。

そう、簡単なショットを打ち損じたり、審判に不利な判定を下されたりなど、何かがうまくいかないと、少年はひどく腹を立てたのです。そしてその恐ろしいかんしゃくのせいで、本来なら勝てていたはずの試合にも負け始めました。

ある日、少年の父親が、大きなトーナメントの決勝戦を見に来ました。やはりここでも、少年はかんしゃくを起こして叫んだり、ののしったり、ラケットを放り投げたりし始めました。父親はこの不快な振る舞いを10分間じっと眺めていましたが、やがてテニスコートまで歩いて行き、その場にいる全員にこう告げました。「試合はもう終わりです。息子は棄権します。」 それから息子に歩み寄って、険しい声で言いました。「一緒に来なさい。」

帰宅すると父親はラケットをクロゼットにしまい、こう言い渡しました。「今後6か月間、このラケットにも他のラケットにも触らないこと。以上だ。」

6か月が過ぎると、父親はラケットを息子に手渡し、こう言いました。「一言でもののしっているのを聞いたり、怒ってラケットを投げているのを見たら、今度は永久に取り上げるぞ。自分で感情をコントロールできないなら、父さんがするしかない。」

少年はテニスができることが嬉しくてたまらず、以前にもまして熱心に競技に励みました。そして16歳になる頃には、ヨーロッパ中の様々なプロのトーナメントで優勝するようになっていました。

若者はトーナメントを経るごとにますます腕を上げ、報道で「十代の天使」と謳われ始めました! 父親に謹慎を言い渡された後、少年は極めて緊迫した状況下にあっても、自分の感情をコントロールできるようになったのです。

それが楽に勝てるような試合の最初の得点であれ、神経がすり減らされるような白熱した決勝戦の最後の得点であれ、彼の表情や振る舞いは変わりませんでした。自分の感情を完全に制御できていたのです。

やがて多くの専門家が彼を、いまだかつて存在した内で最高の選手と認めるようになりました。彼は18歳で初優勝した全仏オープンでは通算6勝、またウィンブルドン選手権では5連覇するなど、主な大会で合計14勝しています。かつてはテニス上手の駄々っ子であったのが、後に「十代の天使」として知られるようになったその人は、ビョルン・ボルグです。

きっとビョルン自身、自分の感情を制御できるようになったことが、人生そのものとまではいかなくても、テニス選手としてのキャリアの転換期となったことを、真っ先に認めることでしょう。5才であろうと55才であろうと、自分の感情を制御するとは、人は常に自分に起こることをコントロールできるわけではないと心得ておくことです。けれどもビョルン・ボルグが学んだように、それらに対する自分の感情的な反応をコントロールすることはできるのです。—バーク・ヘッジズ著 『You, Inc.』(一部変更)

ビョルン・ボルグは十代で自分の感情をコントロールできるようになり、その結果大いに成功して、素晴らしい人格の持ち主となりました。ボルグの父親が介入して、彼に教訓をたたき込んだのです。天の父なる神も、私たちに自己制御やセルフコントロールを教えるために、必要とあらば同じことをされることもありますが、その一方で、私たちが自ら選んだ間違った道を歩むに任せられることもあります。やがて自分を制御しないならどういうことになり、大抵は自分が考えていたような結果にはならないことに、私たちが自分で気づくまで。「飲み込みの速い人間」になりたいと思うなら、主が介入されるまで待つことも、主が常にそうして下さると期待することもしないでしょう。時々、というか実際にはしばしば、主は私たちが辛い経験を通して教訓を学ぶに任せることを厭われません。ですから、私たちが自分の行動や感情に責任を持てるようになることは重要です。

暴走した感情の赴くままに行動するなら、それなりの結果が伴います。思慮深さの欠如は、人生を激変させるような影響を及ぼしかねません。そして残念なことに、それらの結果は多くの場合、帳消しにすることも、取り除くこともできないのです。

今日の社会には、より多くの自由や選択肢があり、また私たちはより多くの誘惑や娯楽や悪い寛容にも直面しています。ですから私たちが感情の影響力を重々理解して、それに留意することや、責任を持ち、しっかりと制御できるようになることが不可欠なのです。

自分の気質をコントロールし、感情を制御するのに、遅すぎるということは決してありません。これに関しては数多くの実際的な秘訣があり、それらも確かに役立つかもしれませんが、この面で成長する最も効果的な方法は、主と交わることです。祈りを通して、神の御言葉を読むことによって、また、自分の人生と感情を神に捧げることによって。

悔いのない人生

セルフコントロールのもう一つの側面は、自制心に関することです。たとえば、何かが間違っているとわかっている時に、あなたには、その魅力的で「楽しい」ものから遠ざかるだけの自制心がありますか? あるいは、友人の挑発に乗って、何かとんでもないことをしでかす誘惑に抵抗するだけの自制心が? あるいは失態をさらしたり、さらに悪いことに、何らかの甚大なダメージを引き起こすことのないよう、飲酒を控えるだけの自制心があるでしょうか? 酔っぱらって奇行に走り、そのせいで大切な人との関係を悪くしたことがあるかもしれません。あるいは、車を壊したり、誰かを傷つけたり、仕事を失う羽目になったかもしれません。退学になったり、人から人格を疑われるということもあったかもしれません。

自分の人生を管理するには自制心を、それも並々ならぬ自制心を要します。しかし、自制心は即座に身に付くものでも、容易に維持できるものでもありません。それには浅はかな激情や悪習慣を克服できるだけの精神的スタミナを要し、また取るに足りないことに捕らわれぬよう、数多くの誘惑に抵抗できる不屈の精神をも要します。しかし何にもまさって必要なのは、最も重要な物事に対して絶え間なく意識を向けることです。—スティーブン・コヴィ[2]

調査により、人が若い頃にしでかして、40になった時に後悔する20の事柄が判明しました。挙げられた項目の中には、喫煙、ネット上にきわどい写真を載せること、無分別なSNSの利用、見えるところに入れ墨を入れる、ボディーピアスやプラグをする、お金を使いすぎて借金する、手あたり次第の無防備なセックス、学校を中退する、多忙あるいは無関心なせいで愛する人たちと時間を過ごさない、などがあります。

これらの行為の妥当性をめぐっては、種々様々な意見があり、中にはこれらの行為が危険であるとか、避けるべきものであるとの意見に同意しない人々もいますが、要はこういうことです。あなたは自分の人生に対して、常に今日と同じような思考様式や考え方や姿勢で臨むとは限らず、いつの日か今自分のしている、取り返しがつかず、やり直しもきかない何らかの行為を振り返って、「一体自分は何を考えていたんだろう?」と言うかもしれないのです。

リーダーは、時折過ちを犯しても、そのことを過度に案ずるべきではないが、自らを恥じ入らせるような物事に対しては、抜かりなく防御して然るべきだ。—ジョン・ハンツマン

私たちは今、残りの人生の進路に影響するような選択を下しています。そして当然、良い進路を選びたいと願っています。だからこそ、その道を歩むために必要な正しい習慣を築き、それに見合った訓練を受けられるよう、主が何を求めておられるかや、自分がどこに向かっているか、またその理由を理解していることが、他の何にもまして重要なのです。私たち一人一人は、その手に自分の将来を握っています。日々の選択によって、自分がどんな人間になるかを決定づけているのです。

神は私の好きに使うようにと、今日という日をお与えになった。私はそれを無為に過ごすこともできれば、有益に費やすこともできる。しかし、私が今日することは大切だ。なぜなら私は人生の一日を、それと取り換えているのだから! この日は、明日になれば、永遠になくなり、私がその日と取り換えたものが後に残る。それが損失ではなく、獲得であることを願う。悪いものではなく、良いものであることを。失敗ではなく、成功であることを。そのために払った代価を後々悔いることのないように。—W・ハートシル・ウィルソンの言葉とされている

「ロードマップ」は若い大人向けにTFIによって制作されたビデオ・シリーズ。初版は2010年。2017年5月に改訂の上、アンカーに掲載。
朗読:サイモン・ピーターソン。


1 Burke Hedges, You, Inc. (Tampa: INTI Pub, 1996).

2 Stephen Covey, Everyday Greatness (Nashville: Rutledge Hill Press, 2006), 101.

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